時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

○○ストたち10題

01 スペシャリストの悩み 


狙った獲物は絶対に逃がさない、
世界一のトレジャーハンター、
誰が呼んだか「不滅の牙」。
―――しかし、完璧である筈の彼にも、弱点というものは存在する。

「チーフのおかげで、僕の世界が貴方の色一色になっちゃったんです。
…責任とって下さいね?」

手に入れた獲物に捕えられてしまった場合は、さて如何すればいいのだろうか?
首を捻りながらも、彼の顔には不敵な笑みが浮かんでいる。

「面白い。これもまた冒険だ」

ぐいっと宝物を抱え込んで、自分から口付けた。



ボウケン青赤。あらいつになく余裕なソータが書けるかしら!
と思ったらチーフはやっぱりチーフでした(笑)。








02 ジェネラリストの明日


朝起きたら真っ先に自分の相棒である騎の様子を見に行って餌を与える。
授業をきちんと受け、部隊の結束を高め、放課後になったらひたすら訓練。
武器と物資の陳情も忘れず、いつ戦闘が起きても良いように勤める。
起きたのならば自ら銃を取り、我に続けと突撃し敵を屠る。

「…マジで、お前に出来ない事ってねぇんじゃねぇの」

やっかみ半分呆れ半分で、自分達の隊長をこき下ろすと、
彼はやはり笑顔を浮べたままこうのたまった。

「出来ない事の方が多いんだよ? 例えば」

ふい、と逸らした視線から笑みが消えて、我知らず源は緊張する。

「笑う事、とか」

声が随分細かったので、一発後頭部を平手で叩く。痛いよ源くん、と傾いで戻った顔は不器用な笑顔だったので、安心した。
それが彼の本当の笑顔だと気づけるぐらいには、彼のことを知っていたから。



ガンオケ源岩源。大分打ち解けてきた二人。








03 センチメンタリストの喜び


「あやっ! やった! やったぞ甘寧!」

屋敷の石段を3段飛ばしで駆けてくる大きな身体を認め、僅かに顔を上げてそちらに向けた。

「合肥攻略の最高司令官に任ぜられた! 曹操を討つぞ!!」

子供のような笑顔に感激の余り涙を浮かべ、彼は走ってくる。
だんだんだん、と夢中で朝服に朝靴のまま階段を駆け下りるのは極めて危険―――

ずるっ!

「あやっ!? あやっ、たっ、たっ、たああああ!!」

という甘寧の目論み通り、珍妙な叫び声をあげて、転がりかけた呂蒙の身体を、

ぐいんっ!

「ふおっ!? …………あや?」

襟首を引っ掴んで、無事に自分の前に立たせることに成功した。



蒼天航路・甘寧×呂蒙。髭オヤジどもが行う恥ずかしい仕草が大好きだ(お前ね)。








04 エゴチストの敗因


「こういう状況になったのも、お前に責任の一端はあるんだぞ」

「オイオイ、こいつら皆お前の元部下だろ? 躾はしっかりしてくれや」

「その原因はお前だと言っている。僕の根幹をばっきり折ってしまった自覚はあるんだろうな?」

「こっちもお前のおかげで、散々揺さぶられたぜ?」

「戯言を。お前の言葉を真に受けた自分が嫌になる」

「お前がそれを望んでたから、やったまでだ」

「ふざけるな、責任とって貰おうか」

「その台詞、そっくりお返しするぜ」

「「この、自己中!!」」

お互い笑顔で得物を相手の首筋に突きつけた後、背中合わせで敵の襲来に備えた。



魔人・むらきさ。二人とも自分勝手。それでいいよそれがいいよ。






05 ソリストの孤独


がりがりがりがり、鉄がコンクリートを削る音がする。
がつがつがつがつ、拳がコンクリートを殴る音がする。
がんがんがんがん、額がコンクリートを叩く音がする。

「ああ、五月蝿いっての」

部屋の中から聞こえる不協和音に眉を顰めながら、淳はドアに寄りかかった。
迂闊に入ったら彼の操る楽器の一つにされてしまうので、流石の淳もそんな無茶はしない。

「…さっさと戻ってこい、馬ー鹿」

ただ一言、届かないと解っている言葉を呟いて、不機嫌そうに立ち上がってその場を去った。



龍騎・タケマメ。遠い、遠い。








06 テロリストの愛


「嗚呼、何故私には犬の如き牙が無いのだろうね?」
「―――ついに狂ったか? はぐれ者」

心底不機嫌な声音で、死神ウサギは目の前の狼藉者を睨みつけた。
狼藉者の両前足は、しっかり彼の前足を押さえ込んでいて、動かすことが出来ない。
彼の腹の上に腰を乗せて、月の光を背に受けて覗き込んでくるそのウサギは、
いつも通りの人を揶揄する笑みを浮べながら―――酷く、その紅い瞳を揺らしていた。

「せめてそれぐらいあれば、貴方に取られるより先に、この」

するりとしゃがみこんだウサギの頭が、死神の首筋に擦り寄せられる。
反射的に首を縮ませると、くつくつという笑い声が体毛を揺らした。

「細い喉笛を噛み千切ることだって、出来るのに」

物騒な言葉と裏腹に、その声に僅かな震えを感じ、
死神は、意味が解らないまま、抵抗もしなかった。



Forest・うさぎーず。えーと、進展しました(オイ)。
た、たまには余裕がなくなったっていいじゃない。






07 ニヒリストの夢


「この辺で、無くしたと思うんだけどなぁ」

寺の門前で、黄金色の髪の子供は心底不思議そうに首を傾げた。
彼は、無くしたものを探している。しかし、一体自分が何を無くしたのか、それは解らない。
記憶が無いわけではない。「大きな自分」が現界してより10年、その間の出来事は全て頭の中に残っている。
しかしそれは、あくまで頭の中に残っているだけで、実感が沸かないものだった。
―――手に入れた喜びも、無くした悲しみも、彼自身が感じることが出来ない。
だからこそ彼は、何を無くしたのか解らない。

「あ。ここかな?」

やがて目の前にぽかりと開いた洞窟の入り口を見つけ、少年はやっと顔を綻ばせた。
この奥底で、「彼」の願いが終焉した事を知っている。だから多分、ここにある筈だ。
「彼」が死んだ事で、無くしてしまった自分の何かが。

「ここから先は、大人のボクが探した方が良いよね? 戻るのはちょっと憂鬱だけど…」

はぁ、と溜息を吐いて少年は、一歩洞窟の中に踏み出す。
その瞬間、かつりと岩床を叩いたのは大きな踵になっていた。

「―――ふん。このような場所、不本意だが探してやるか」

不機嫌そうな言葉を一つ。それでも紅い瞳は迷い無く、真っ直ぐ前を見詰めていた。



Fate・言ギル。ゼロ楽しみだな!(言い訳は)
教会主従の会話シーンが一回でもあるならそれで満足です(安)。








08 フェミニストの失態


「…ヒビキさん、それどうしたんですか?」
「あっはっはっは、いやいや」

鬼の頬に見事に咲いた大きな紅葉に、
驚きつつも明日夢はすっかり使い勝手の良くなった救急箱から湿布薬を取り出した。

「あ、いいよいいよこれぐらい。すぐ治るって」
「でも腫れてきてますよそれ。冷やした方がいいですよ」
「げ、ほんと? 香澄美の奴手加減なしだなー」

しゃきん、と白い湿布を適当な大きさに切り、そっと相手の頬に貼る。
いちち、とあまり痛く無さそうな悲鳴と共に治療は終了した。

「いや俺はね、これでも反省してるんですよ? でも譲れないものってのはあるわけで」
「何を譲れなかったんですか?」

何だかんだ言ってもヒビキの事を尊敬している香澄美がここまでするのだから、余程の事があったのだろうか。
疑問を込めてじっと見詰めると、湿布の上を指でこりこり書いて、もごもごとヒビキは呟いた。

「…ここ数ヶ月、あいつの買い物とかに付き合えずにドタキャンしまくってたんだけどね」
「それは、怒られますよ…」
「だぁってさぁ。約束した後に明日夢から電話とかかかってきてみなさいよ。そっち優先しちゃうから、すぐ」

ちなみに今日もです、と何故か胸を張って言う男の目の前で、ぺしょりと明日夢はへたり込んだ。

「あれ? どした? おーい」

あっという間に火照る顔を耳毎隠したくて、両腕で頭を抱え込んだ。
香澄美には本当に申し訳ないのだけれど、嬉しいんだからしょうがない。



響鬼・アスヒビ。なんだこれなんだこれラブい…!(落ち着いて)
もういいじゃんお前ら夫婦になれよ。(真剣なまなざし)







09 リベラリストの不自由


「なっちゃんなっちゃんなっちゃん」
「煩い。一度で良い、聞こえてる」
「えへへ、ごめん。見て見てこれ」

目の前に差し出された雑誌に眉を顰めると、これこれと指で示される一つの記事。
昨今の情勢がどうなっているかはもう軍から退いた自分達には解る術も無いが、
少しずつ人類は優勢になってきているらしい。
通販情報として提示された、スポーツ用車椅子の値段が随分下がっていたから。
こんな、通常の兵士には意味を成さない代物が、出回る世の中にはなってきているという事だ。

「これあったら、なっちゃん出かける時随分楽になるやんなぁ。
えーっと、貯金今いくらあったっけ…」

うきうきと、今にも通帳と財布を探してこようと腰を上げかけた祭の袖をぐいと引っ張る。

「わっ? …どしたん、なっちゃん」
「別に良い」
「え、でも」
「良いって言ってる」
「わ、わ、ちょ、ま、」

きょとんとした顔を見るのが我慢ならず、抱き込んだ。慌てた悲鳴が胸の上に吐き出されるが、構わない。
――――くそ、気づけ。それがあったらお前、僕の椅子を押さないじゃないか――――



ガンパレ・夏祭。ラヴィンユーイエ――――!!(壊)
祭ちゃんに甘えたいなっちゃん。でも祭ちゃんなら必要じゃなくても押すと思うな!(主張)







10 モラリストの涙


「兄さん」

あぁ、また泣きそうな顔をしている。
目を閉じたままでも解る、これでもこいつのこの世でたった一人の兄貴だ。
今じゃ滅多に涙なんて流さなくなったこいつが、泣くのはこんな時だけだから。

「兄さん。兄さん」

自分を呼ぶ声は酷く震えていて、鼓膜に嫌になるほど響く。
この身体が自由に動くならきっと引っ叩いてる、何情けねぇ面してやがる、と。

「ごめんなさい」

何で謝る。
何で謝る。
お前の気持ちに気づかなかったのも、お前の気持ちに気づいてしまったのも俺だ。

「ごめんなさい。お願い、だから―――」

頬に当てられた両手も震えている。じわりと瞼を開くと、何故か弟の顔が良く見えなかった。

「泣かないで」

それはお前だろ、馬鹿ナガレ。



555青赤。2、3年に一度ぐらいの周期で書きたくなる暗くてメロウな次男長男(何)。
でもうちの兄弟はやっぱり好きすぎて暴走する弟とそれを拳でのめす兄でいいと思うよ。(開き直り)