時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

甘ったれ10題

01 置いてかないでよ


その足はとても軽やかで、
その手は既に遠くへ伸ばされ、
その目は未来しか見ていない。

「…甲太郎? どした?」

嫌だ嫌だ嫌だと口には出さずに駄々を捏ね、
血と泥に塗れた重い腕で、
その身体にしがみ付いた。
もう飛んでいかないように。
拒絶されないのだけは、解っていたから。

「どーした、甘えっ子ー」
「…ぅるせぇよ」

揶揄交じりの声と、落ち続ける砂時計の砂の音が聞きたくなくて耳も塞いだ。


九龍皆主。甲太郎は甘えっ子というより甘ったれだよなぁ(相応)







02 ちょっと手伝ってくれると嬉しいなぁ


実際、嬉しかったりするのだ。
何でもかんでもその薄い背で背負おうと躍起になって、
周りを見ないようにして目を瞑っていた奴が、
自分には頼ろうとしてくれることが。

「拒否は許さないぞ、祇孔。さぁ手伝って貰おうか」

商品の仕入れの為、満面の笑顔で旧校舎に誘う彼に腕を引かれていると、
正直甘やかしすぎたかとも思うけれど。

「了解、付き合うさ」

そんな顔を見たら拒否など出来る筈も無い。
降参の意志を表明し、足を動かすことしか出来ないのだ。


魔人むらきさ。甘える事を覚えてくれればそれでいい。







03 ほらね、すぐそうやって笑顔で誤魔化す


「優しくしてもらって悪いけど、僕は人を好きにはならないと思うよ。その人に、迷惑をかけるから」

息が止まった。
いつも顔に張り付いていた軽い笑顔がなりを潜めて、
無表情の赤みがかった目がじっと源を見ていた。
しかし、何か言おうと源が口を開きかけたところで、

「…まだ夕飯まで余裕はあるかな? 一緒に訓練でもどうだい?」
「…悪いな」

すぐにその顔は笑みに戻ってしまった。
その顔は決して嫌いではないのに、
酷く腹が立って、吐き捨てるように拒否の返事をして源は教室を出ていった。
だから彼は気づかなかった。
無理やり作っていた岩崎の笑顔が、あっという間に消えてしまって、
「失敗した」と小さく呟いたことも。


ガンオケ源岩崎。本気です よ!(痛)青やりたいなぁ…源で岩崎を落としたいんじゃー(痛)






04 手を繋いで歩こう


いつだってその掌は、自分を導いてくれたから。

「ねぇ、兄さん」
「あん? 何だよ」
「手、繋いで良い?」

間髪いれず、ごんっ。と拳が振って来た。

「…痛い……」
「バカかお前はー!! 表でんなこっ恥ずかしいこと出来っかぁあ!!」

ずかずかと早足で先に行ってしまう背中を、慌てて追いかける。
勿論自分でも戯れのつもりだったけれど、繋ぎたいという思いは本物で。
諦め切れなくて、兄の上着の裾を掴んだ。
また拳骨かなと思ったけれど、振り向かないまま拒否も無くて。
家に帰るまでの僅かな間、その手を離さなかった。


555青赤。必死な弟と兄の譲歩のライン。かゆ。





05 甘えんぼなんだよ


親友と、そこから一歩進んだ関係になってしまって暫く。
何が変ったのかといわれると、指摘するのが非常に難しいのだが。

「テストの採点か?」
「あぁ、うん」

風呂から上がった相原が、すとんと極自然に自分の脇に腰を下ろす。
手元を覗き込んでくるせいで、僅かに湿った髪と頬が肩に触れる。
…あぁ、こうやって近づいてくることは増えたな、と何となく思う。
それはとても極自然で、決して不快では無かったので。

「…っ? 菊池?」
「いや、何となく」

採点をする片手間に、その頭をよしよしと撫でてやる。
動揺して身を離そうとする相原が面白くて、もっと甘えさせてやろうと抱き寄せた。


ぼくらの相原英治。相原が甘えられるのは英治だけなのですよ(主張)。








06 君限定で甘えてるって知らないだろう


草原を駆けていく白い姿が一つ。
その頭の上で跳ねている緑色の光が一つ。

「…オイアマ公! 聞いてンのかァ!?」
「あう?」

鼻先でぴょんぴょん飛び回る相棒の声にトボけた声で首を傾げ、

ばくん。

うるさいなぁ、とばかりにその光の珠を大口を開けて含んだ。

「……ぺっ」
「ブェーッ!! 何しやがんだこの毛むくじゃらァ!」

幸いすぐ吐き出されたが被害は甚大なるもので、涎塗れになった身体を必死に振りつつ、
イッスンはその光を怒りの篭った赤に変える。

「ったくヨォ! 俺がいなけりゃなァんにもできねェくせにふてェ野郎だぜェ!
大体お前はこのイッスン様の有り難味ってヤツが解っちゃいねェ―――って聞けよォ!!」
「わん!!」

また鼻面でぴょんぴょん飛び跳ねだした言葉を聞き流し、アマテラスは再び駆け出した。
…大いなる慈母である彼女が妖怪相手でないのにここまで無体をするのは、
偏にそうやっても彼が離れてはいかないという確信に似た期待があるのだが。
まだ二人とも、その事実には気付いていない。
今はただ二人、風の吹くまま走り続けるのだ。


大神イスアマ。相棒萌え。アマテラスはやっぱり女の子がいいなあ。





07 飴玉キラキラ


ころからん、と缶の中身が綺麗な音を立てた。

「あー、中で固まってんなぁ。いよっと」

がららん、とさっきより大きな音を立てて、中でくっついているドロップを狭い口から取り出した。

「よっし、取れた。少年も食べる?」
「あ、はい。いただきます」

甘いものは嫌いではないし、この人からの提案を拒否できる筈もなく。
恐らく乗せられるだろう掌を差し出す、その前に。

「はいあーん」
「えっ!」

唇の目の前に透き通ったドロップを差し出され、驚愕の声を上げた瞬間。

「うりゃ」
「もぐ…」

放り込むというより、舌の上に乗せる感じで、指が口の奥まで入ってすぐに出て行った。

「んまい?」
「…………は、い」

味なんて解らないと思ったら、吃驚するぐらい甘かった。


鬼アスヒビ。あーまーい!!(悲鳴)






08 いつまで一緒にいられるかな


「なぁ、甘寧。おれは馬鹿だからはっきり言われんと解らん、
だから正直に言ってくれ」

尊敬する大都督が果敢なくなってすぐ、呂蒙は真剣な声で問うた。
誰よりも憧れた人の早すぎる死に、つい先刻まで泣きじゃくっていた筈なのに。

「おれは、お前が剣を預けるに相応しい男か。
あや、違う。必ずそうならねばならん、だから」

たどたどしくも、必死に言葉を紡ぐ。
その瞳は未だ濡れていたが、確りと次を見据えていた。

「ついてきてくれ。共に、孫呉の天下を目指そう」

きっと他の者に言えば、若輩が何を言っているのかと一笑にふされる所だったろう。
しかし、彼は。

「……承知」

短く一言、是と答えた。
これから自分達が行く道が血塗られていると解っていても、
いつか必ず、お互い国の礎となって死ぬ事が解っていても、

「…ありがとう」

その信頼が何と重く、また嬉しかったことか!


蒼天甘りょも。甘寧は呂蒙をずっと早くに認めていてくれればいいなぁ(夢)





09 ホントは自分に甘えて欲しいだけだった


離れたところで微笑んでいる彼を見る。
他の人の前で、微笑んでいる彼を見る。
自分には出す事の出来ない笑顔、それを見るのはとても嬉しい筈なのに、

「…い、た……」

じくじくと、心臓が痛む。
彼から笑顔を取り去ってしまったのは自分のせいなのに、
自分は彼の為全てを擲って尽くさなければならないのに、

「痛い…痛いよ、なっ、ちゃ…」

ぢくぢくと、心臓が哂う。
自分が情けなくて、恐ろしくて、その場に膝をついて蹲った。
彼に嫌われるのが何より怖い筈なのに、彼に憎まれるのが嬉しくて仕方ないのはどういう事?
相手を傷つけて、それで全て自分のものになったと悦んでいたのではないの?

「ごめ…ごめんなさい…ごめんな、さい、なっちゃ…ぁ…」

必死に詫びているのに、口の両端が無様に引き上がっていくのが嫌で、顔をぐしゃぐしゃと手で拭った。


ガンパレ夏祭。多分始めて書くダーク祭ちゃん。そして多分もう書かない(痛)。
やっぱり二人はラブラブでないと嫌なんじゃー!!!(じゃあ書くな)








10 それでも君が大好きだよ


生まれた時から、この世界は優しくないことを知っていたの。
だって市は魔王の妹だから。
にいさまがこの世の怨嗟と悲嘆を全て受け止めるから、市もそれに染まっていくの。
にいさまは最後の最後の最期まで、そのまま生きていくんだろうけど。
市には無理。途中で耐え切れなくなって、影に沈むの。
痛くて辛くて嫌だけど、仕方のないことなの。
だけど助けて欲しいの。誰でもいいから、助けて欲しいの。

「ならば私が、お前を救おう! 全ての悪は私が削除する!」

長政様。全ての悪が消えてしまうなら、やっぱり市も消えてしまうの。

「そんな筈があるか! 正義の名の下に我が妻となれ! そうすればお前も…」

正義なんて漠然としたものが、この世に存在しない事も知らないのね。
なんて、愚かで、哀れで、可哀想で、…いとしいひとなんだろう。

「長政様。市はずぅっと、長政様といっしょだよ…?」

あいしているから、いっしょににいさまにころされようね…?


BASARA長市。書いちゃった! 本当にハマった! ラブ!(落ち着いて)
実を伴わない正義を標榜する理想主義者と、この世全てを諦めているくせにしがみ付きたい現実主義者。
ワァぴったり(痛)。お互いを蔑みつつもラブラブを希望します(何)。