時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

五感

〜視覚〜



『―――Vレックス! 俺の声を聞けぇ!!』

名を呼ばれた、と理解した瞬間、視界が開いた。
レーダーが明滅を繰り返し、対外カメラのレンズがピントを合わせる。
目の前に立つ小さな存在は、赤と黒を基調にしたスーツに身を包み、視線を確りと自分に合わせていた。
「それ」を確認できた瞬間、ボディ全体が震えた。
それは人間の感情に例えるなら、涙を零すほどの歓喜に値する。
初めて見る主の身体を確りと見詰め、機械の恐竜は従の意思を執った。

今此処に、私は生まれた。
―――さぁ、ご命令をMy Master!



タイム・V直。ぎりぎりで擬人化は無し。
どっちかっていうと聴覚かもしれませんが、そっちは別に書きたいネタがあったので視覚で。
存在すら磨耗しかけてたVレックスが初めて視認出来たのはやっぱり主人の姿だと思うわけで。
ほらインプリンティング(違)。







〜聴覚〜



目を閉じて耳に神経を集中させる。
自分の心音とは別に、とくとくと少し早い音が聞こえる。
でも、急かされる感じは全然しない。寧ろその落ち着きの無さが微笑ましくて、頬が緩む。
心地良い。

「…ヒビキさん……」
「んー? どうした少年」
「あの…何で、こんな格好で、」
「あ、重い?」
「いえっ、そういうわけじゃっ」
「じゃもうちょい貸して。寛ぐー」
「……………」

寄りかかった背中は自分より小さい筈なのに、ちゃんと体重を支えてくれている。
無視して立ち上がれば良いのにな、と思いつつ優しさに甘えていると。

「…………っ」
「…!」

横に投げ出していた手の上に、幾分小さな掌が重ねられた。
きゅ、と力の入る指先に、自分の心臓が聞こえる音に合わせて早さを増していく。
――――参ったな。
改めて彼が鬼を目指さぬことに感謝した。そうであったらきっと、自分の早鐘の音がばれてしまうから。



響鬼・アスヒビ。長いぜかゆらぶ。
恐らくたちばなの畳部屋で、床に足投げ出して座ってお互いの背中に背中を預けてます。
やっぱり基本リードなヒビキたんと、純情一本気でたまに動揺させるあすむんが好きです。萌。







〜嗅覚〜



目を閉じてすう、と鼻から息を吸うと、心地いい匂いがする。
今作っている料理の香辛料の匂い。―――今日もカレーだ。
服の襟からほのかに太陽の匂い。―――さっき干していた服に着替えたばかりだから。
同じく髪から、シャンプーの匂い。―――シャワーを浴びたばかりだから。
それでもまだ消えない、僅かな汗の匂い。―――沢山汗を、かいたから。
堪らなくなって、衝動の赴くままにその首筋に唇を押し当てて――――

「……この、バカ――――――!!!」

ごんすっ!!
「かふっ!」
「人が飯作ってやってるときになんだコラァー!! あっち行けっしっしっ!!」
「ごめん…でもそこまで言わなくても…」
「やかましい!」
相手の機嫌は直らず、そのまま台所から蹴り出された。
自業自得とは解っていても物寂しい。



555・青赤。ナガレ兄が調子乗りすぎて放り出されました(痛)。
あ、マトイ兄は自主トレ行って帰ってきてシャワー浴びて着替えただけですよ(笑)。







〜味覚〜



「…っ、ちっ」
「…やっぱり駄目?」
湯気の立つ麺を何本か掬い上げ、何度も何度も口を近づけ躊躇い、
漸く中に入れた瞬間、猫舌の君は小さく悲鳴をあげて吐き出した。
「無理だ。絶対無理だって」
「かなり温いと思うんだけどなぁ…本当に駄目なんだ」
自分で感じたことのない事は理解するのが難しい。
他愛ないことだけど、隔たりに感じるのがもどかしくて、相手の頬を両手で包み込むと口を近づけた。
「な―――…っぅ…」
唇を合わせて、舌をゆるりと伸ばし、相手の舌を弄る。
勿論、味わい慣れた何の変哲も無い唾液の味を感じるだけで。
「……別段、僕の舌と変らないみたいだけどねぇ?」
「………ど、いう、調べ方してんだっ!!!」



φズ・勇巧勇。味覚かこれ?(汗)
どうかと思ったけど、仲良しラブな二人を書いても随分落ち着いてました(自分の心が)。
いい加減トラウマ克服出来たのかしらん。







〜触覚〜



心のどこかで、当たり前だと思っていた。
彼の身体に触れられることは、名誉であり光栄であると解っていた筈なのに。
美しいその金属の身体に触れ、傷ついた部分を修復することが何よりの喜びで。
例え永遠に届かぬ思いでも、それでも幸せだったのに。

「…………」

今目の前に広がるのは海。冷たく波を打ち寄せるだけで、何も答えない。
その腹の中に、自分の愛しい相手を飲み込んだまま。

「…機龍っ…き、りゅう…!!」

どんなに泣き声をあげても、もう二度と触れられない。



GMMG・機龍×義人。やっぱりぎりぎりで擬人化は無し。
うちの義人は只管機龍ラブなので、誰もいないところなら愛情表現は臆面もありません。(何)