時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

都々逸五十五

一 諦めましたよ どう諦めた 諦められぬと諦めた

「もう、諦めてしまえばいいのに」

「お前にだけは言われたくない」

「どうやったって僕達は、人類の敵なんだ」

「そんなことは解ってる」

「もう君だけがそんなに苦しむ必要はないんだ!」

「お前だってまだ、諦めてないじゃないか!」

「俺は同族(きみ)を救いたいだけなのに!」

「俺は人間(おまえ)を救いたいだけなんだ!」


Φズ勇巧勇。だからこんなにも絶望が苦しいんだ。



二 あの方恋しや この方愛し 恋と愛とはちがうもの

「君のお相手に、何も言わずに来て良かったのかい」
「何か言わなければならなかったの、ローレンス?」
「いいや。だが、彼女は―――いずれ君の伴侶となるべき相手なのだろう。それなら――」
「彼女の事は好きだよ、でも会おうと思えばまた会えるじゃない。それよりぼくは、ローレンスと一緒にいる方が大事だし楽しいんだ」

…その結論には色々と、咎めたり嗜めたり諭したりする行動が必要であるとローレンスは理解していたのだが。
堪えても胸のうちから湧き上がってくる嬉しさが、それを邪魔した。
馬鹿げていると思いながらも、愛しさを込めて擦り寄る鱗を纏った顎を撫でることしか出来なかったのだ。

テメレア戦記のテメレアとローレンス。本編でラブラブすぎてもう何も言うことはな(以下略)



三 あの人の どこがいいかと尋ねる人に どこが悪いと問い返す

「私にはわからないわ」

かけられた声に、ウサギはくつりと哂った。

「だってあなた、あんなにあの子を怖がっていたじゃない。
あなたの恋人も家族も仲間達も、全て奪ったひとじゃない。
それなのにどうして、あなたはあの子を好きになれるの?」

青い魔女は、今目の前で紡がれるものと、自分が遥か昔に読んだ筈のものに、
齟齬が出るのを嫌がっているらしい。らしくないことだ、とやはりウサギはくつくつと哂う。

「君がそれを言うのかい? 名高きハジマリの子、魔女アマモリよ。
世界は変わる。世界は巡る。変わっていくのだよ、君も私も―――」

そこまで言って、ウサギは言葉を止めた。もう聞きたくないとばかりに魔女が目を逸らし、耳を両手で塞いでしまったから。
やれやれと呆れて首を振り、ウサギは実に不思議そうにこう嘯いた。


「私にはわからないことがわからないねぇ―――あんなに可愛らしいヒトが、他にいるっていうのかい?」


森うさぎーず。惚気。



四 異見聞く時ゃ頭を下げな 下げりゃ異見が上を越す

お偉方と話すのは苦手だ。
自分で銃を取って戦う器量も無いくせに、ねちねちと文句だけはつけてくる。
部隊長である岩崎だけならともかく何で自分まで呼び出されたのか。
絶対に英史の陰謀だという苛立ちが、目の前の豪勢な軍服を睨む目に力を入れさせてしまう。
怯んだ相手を思い切り嘲笑してやろうと思った瞬間、

「―――はい。大変申し訳ありませんでした」
「っ、んぐ!?」

不意に隣に立っていた岩崎が源の後頭部を掴み、自分と共に頭を下げさせた。
こいつらに自分が頭を下げるのは勿論、彼が下げるのも気に入らなかったので、怒鳴りつけようと息を吸うと。
一瞬だけ微笑んで、誰にも気づかれないようにぺろりと舌を出した岩崎の、子供っぽい顔にその息を飲みこんでしまった。


ガンオケ源岩源。多分物資使いすぎとかで呼び出されたんだと思う。世渡り上手と世渡り下手萌え。



五 一寸も はなれまいぞと思うた仲は 主も五分ならわしも五分

たまの重なった休日、家に二人きりなのが嬉しくて。

「兄さーん」

床に座っている兄に後ろから手を伸ばし、首に巻きつけて甘えてみる。

「ぐぇ、何すんだお前。離せ!」

当然怒られて振り解かれたのだけど、手は掴まれたままで。

「こっちにしろ、こっちに」

あれっと思っているうちに、腰に手を回された。
ぽんぽんと重なった手の甲を叩かれ、離される。

「ったく、今いいとこなのに邪魔すんじゃねぇよ」
「…………はい…」

改めてテレビに集中し始めた兄の肩に首を埋めて、幸せを噛み締めるナガレだった。

555青赤。兄さん慣れ過ぎですー!!(悲鳴)



六 嫌なお方の親切よりも 好いたお方の無理がよい

―――この溝泥みたいな町で、いい顔して近付いてくるやつなんざ皆信用できない。
甘ったるい言葉と美味い餌で、この猫を縛りつけようなんざちゃんちゃらおかしいよ。
猫に鎖なんかつけられない。
つけられたってこの爪で砕く。
塒は自分で決めるのさ。

「眠りにくくないのかい、アティ」
「…………眠らせてくれなくったって、いいのに」
「アティ? 良く聞こえなかった。もう一度――」
「い、いいんだってば!」

一番寝心地の良い場所で、朴念仁の唇を塞げば、それだけで幸せ。


インガノックのギーアティ。ギーせんせは「無理」も言わないのが腹立つよね!(笑顔)



七 色じゃないぞえ ただ何となく 逢ってみたいは惚れたのか

「こんにちは、プロイセン君」
「げっ、またきやがった! 何だよ仕事はちゃんとやってるぜ!」
「うん、僕の家の中で一番の稼ぎ頭だよね、ありがとう」
「おー、そうだろーとも! 敬い尊べ跪け!」
「あはは、宗主国に対して生意気なこと言うなぁ、お仕置きしていい?」
「やめろ! 怖い! コルコル言うな!」
「本当、君と話してると楽しいよ」
「…だから、何しにきやがったって聞いてんだろーよ」
「…………楽しいから、だよ?」

「仕事の邪魔すんなぁ!!」
「あはははは」


APH・露普。普が東独設定・統一前で。共○圏の優等生だったらしいですぬ。まだお互い無自覚。



八 歌は何う読む 心のいとを 声と言葉で 綾に織る
  
「長政様…市、今ね、歌の手習いをしていたの…」
「そうか。それがどうした?」
「なかなか上手く、出来ないから…長政様、お手本見せて…」
「な、何!?」
「…好きな人に捧げる歌なんて…市、歌えないから……」
「………馬鹿者! 他者の言葉を借りて歌うなど、歌として悪だ!」
「ぁ……ごめんな、さい…」
「な、泣くな! つまりだな、お前の歌ならば私は何でも良いと…!!」
「……そう、なの? うん…市、頑張るね」
「知らん! 勝手にしろ!」


戦国BASARA長市。英雄外伝であまりにもラブラブすぎて吹いた。だがそれがいい(素直)。ツンデレ×ヤンデレ最高。



九 団扇づかいもお客によりて あおり出すのと招くのと

「ぅあ〜っつ〜…」
(がらがら)「どーもー! いやー今日も暑いっすねー!」
「うわ、暑苦しいのが来たー。帰れー」(ばさばさ)
「ちょ、酷いじゃないっすか! 団扇でシッシッてしないでくださいよ!」
「お前は日菜佳にでも扇いでもらえ」
(がらがら)「おはようございまーす!」
「おっ明日夢〜。暑かっただろー、ほらこっちこい」(ぱたぱた)
「あっ、ありがとうございます! でもいいですよ、ヒビキさん疲れちゃいますよ」
「遠慮すんなよー、ほらほら」(ぱたぱた)
「…何すかこの待遇の差はー! 納得いかないっすー!」
「トドロキ本当煩い」(ばっさばっさ)
「理不尽っすー!!!」


鬼アスヒビ。最終回後だから名前呼びだよ! そしてもう臆面もないよ!



十 梅もきらいよ桜もいやよ ももとももとの間が良い

花を見るのが嫌なわけではない。
この人と見られるのなら、更に心が浮き立つのも当然のこと。
それでも。

「明日夢ー。ほんとに寝ちゃったか? 寂しいぞー、起きろよー」

上から降ってくる、咎めている筈なのに柔らかくて優しい小声と、
今頬を埋めている硬い枕の寝心地が、どうにも離し難くて、
明日夢は必死に寝たふりを続けた。


鬼アスヒビ。花見で膝枕! 膝枕!



十一 逢うた夢みて笑うてさめる あたり見まわし涙ぐむ

夢を見た。
いつもと変わらない学校があって、
いつもと変わらない友達がいて、
いつもと変わらない、あなたがいた。

当たり前だと思っていた日常は全部、
世界の果てから転がり落ちたのに。

大穴を見下ろせる校門の前に立ち、みかるは一人で泣いた。


if…アキラ女主。久しぶりに書いたら暗い! 暗い!



十二 岡惚れ三年 本惚れ三月 思い遂げたは三分間

初めて出逢った時、あの人に魅せられてから。
傍にいることが嬉しくて誇らしくて、この想いが何であるのかすら考えていなかった。
ところが、だ。
新たに加わった仲間達は、「真っ向から突っかかる」という自分ではとても出来ないことをあの人にやってのけて。
尚且つあの人もそれを心底面白そうに受け止めて。
焦りが感情の増加を招いた。
意識すらしていなかったのに、告げることなど無いと思っていたのに、

「チーフ、好きです」

つるりと唇から漏れてしまった言葉は、もう取りかえしようがなかった。


冒険青赤。本惚れは両思いの意味だけど、まぁ意訳で。



十三 お酒飲む人しんから可愛い 飲んでくだまきゃなお可愛い

玉で飾られた豪奢な杯を掲げて、その人は笑った。

「此度の任を終えれば、私の地位も堅くなる。
その時お前は、全ての忌まわしき楔から解き放たれるのだ」

決して正体を失くすほど酒を過ごすことなどない人なのに、
自分の竜の前でその話をする時だけは、冷たい声音が上擦って熱を持つ。
無理はしなくていい。
自分は、貴方に凶兆を齎さなければそれだけでいいのに。
嬉しさを隠さずに鼻先に口付けてくる己が伴侶を宥める言葉を、リエンは思いつかなかった。


テメレア戦記・ヨンシンとリエン。普通に伴侶って書いちゃったけどあいつら伴侶だよね?(真剣な目)



十四 おまえの心と氷室の雪は いつか世に出てとけるだろ

主の心は、常に熱く激しい。
しかしそれは、まるで氷のように冷たく硬いもので覆われている。
そのせいで主は、心の外も内もその氷で傷つきかねない。
何故主がそうなってしまったのか、彼には解らないし、解る術も無い。
彼は従者である。主に仕え、主の望みを叶える為だけに存在するロボット。
そして彼は忠実な従者であり、主が絶対に自ら、己が心の解放など望まない事を知っているのだ。
だから彼は願うしかない。いつか、どうかいつか、その氷を融かしてくれる存在が現れることを。
―――――それは彼にとって、酷く「悔しい」ことであったし。
彼自身は当然、その感情を認識することは出来なかったのだけれど。


TRV直。機械的嫉妬(うわぁ)。



十五 表向きでは切れたと言えど 蔭でつながる蓮の糸

立つ鳥は後を濁さない。
自分のいた痕跡は全て抹消し、何一つ残してはいけない。
解っているけど、解っているけど。

耐え切れず、メールを出してしまう。返信が出来ないように、いつも捨てアドレスでだけど。
書いているのは他愛の無い日々の話。自分が今いる場所など書いたら、咎められる危険があるから。
相手がどう思っているかは解らない。全部読まずに捨てられているかもしれない。
それでも止めることが出来なくて、今日も。
会いたいという本音を最後に一言だけ告げて、電子の手紙を送り出した。


九龍皆主。きっと皆守は返事が出せないからイライラしてるよ! でもメールは全部保護かけてるよ!



十六 思う程 思うまいかと離れて居れば 愚痴な様だが腹が立つ

「呂蒙殿」
「なんだ陸遜」
「お気持ちは解りますが、お心をお沈めなさいませ」
「何が言いたい」
「お体にも宜しくありません」
「お前は薬師か。俺が鼻血を吹くのはいつものことだろう、気にするな」
「鼻血の事であるとは一言も言っておりません」
「ぐむ」
「不機嫌であろうと、その乱れを兵に見せてはなりませんよ」
「だ、だから、一体何の」
「甘寧殿が自軍に居らぬのが、そんなにご不安ですか?」
「なななななな」
「ああ失敬、ご不満ですか」
「…ぶふぁっ!!!」(墳血)


蒼天甘りょも。陸遜のりょもいぢめ。



十七 面白いときゃお前とふたり 苦労するときゃわしゃひとり

「何か手伝えること、無いのか?」
「何だよ、薮から棒に」
「いや…面倒な事は全部お前に任せちゃってるからさ」

振り向くと、珍しく申し訳無さそうな菊池の顔があって、相原はくすりと笑う。

「いいんだよ、任せて。お前にやって欲しいことは、もっと別にある」
「そうなのか?」
「ああ。早速だけど、頼みたい」

よし、任せろ!と途端に元気になる相棒に、やっぱり相原は笑う。


―――それでいいんだ。お前は、無理に苦しんだりしなくていい。
お前が笑っている時、一緒に歩かせてくれれば、それだけでいい。


ぼくらの相原英冶。どんな計画も真っ先に相談するのに、あんまり重要な作戦を振り分けない理由(えー)。



十八 思い出すよじゃ惚れよがうすい 思い出さずに忘れずに

寂しくはないのか、と一度問われたことがある。

「さぁ? 普段思い出すことは滅多に無いからね」

そう、戦いの日々が終ってしまっても、やるべきことは沢山ある。
今ここにいない相手の無事を慮って、心を痛めている暇など無い。
思い出す必要は無い。
ただ、忘れたわけでもない。

「僕がどんなに気を揉んだって、あいつは必ず此処に帰ってくる。
確信が持ててしまうからね、無駄な時間を費やすのは止めたんだ」

本音を素直に語った筈なのに、呆れたような苦笑で「ご馳走様でした」と言われてしまった。
何故だ。


魔人むらきさ。のろけを聞いたのは多分壬生。



十九 及ばぬ恋よと捨ててはみたが 岩に立つ矢もある習い

自分にそんな資格等無いと、良く解っているし今でも思っているけれど。
解ってしまうんだ、自分に向けられる好意は。
だって愛されるのは心地いいから。
とてもとても嬉しいことだから。
気が付いたら、胸に刺さった矢はもう抜くことが出来なくなっていた。

「ああ、クソ! 観念しやがれ!」
「うん、ごめん。ありがとう」

僕は、幸せになってもいいですか?


ガンオケ源岩源。ランダムに決めてたのにいい掛詞に当って嬉しい。



二十 顔見りゃ苦労を忘れるような 人がありゃこそ苦労する

損な役回りだと、指摘されたらその通りと言うしかない。
自分が何よりも優先してやらなければならないことは、兄のフォローだ。
そしてそれを労われた事も皆無に等しい。


ああ、だから何だと言うんだ。
貴方の喜ぶ顔が見られれば、それだけで幸せなんだ。


555青赤。幸福と思うか不幸と感じるか、人それぞれ。



二十一 可愛いお方に謎かけられて 解かざなるまい 繻子の帯

死神との追いかけっこは、永遠に終らない。
いっそ追いつかせてくれればいいのに、そうすれば終るのに。

「いっそそうしてお慈悲を頂けても、私は絶対に恨んだりはしないよ?」

いつもの揶揄であった筈なのに、どこか軋んでしまったのかもしれない。
小さな死神は、一度目を瞬かせ、それから伏せ、途方にくれたように呟いた。

「………そうすれば、お前は、もう」

言葉はそこで止まってしまったから、結局真意は解らない。
嗚呼、だが、この私の前で、そんな隙を見せてしまうとは貴方らしからぬ失態!
気付いていないのでしょう、今貴方の瞳がそんなに寂しそうなのを!
歓喜と恐怖が全身を支配して、気がつけば両の前足で彼の体を押し倒していた。

「何を、」

上擦った声を、抵抗を抑えて無理やり唇で塞ぐ。
このまま、吸い取って下さい私の魂全て!
答えの出せない追いかけっこはもう終わりだ!


森うさぎーず。ある意味終幕。恋に狂ってしまった二匹のウサギ。



二十二 君は野に咲くあざみの花よ 見ればやさしや寄れば刺す

犯罪者というものは一般的に、どこか濁った瞳をしているものだ。
後ろめたさだとか、他者に対する感情とか。
目は雄弁で、相手の歪みや澱みを簡単に映し出す。

さて、今向かい合っている二対の瞳。
片や、己が苛立ちで全てを破壊する犯罪者。
片や、己が楽しみの為だけに他者を操り破滅させる犯罪者。
それなのに互いが思うことは、

今まで見たことのないきれいなものを見た、という、馬鹿げた寝言だった。


隆起タケマメ。二人とも瞳綺麗だよなぁと思って。微妙にずれてごめんやっぱこのお題でこのカプは難しい…!



二十三 口に謡うて 声にて聴かせ 心動かす 歌が歌

歌が聞こえる。
途切れ途切れの、歌が聞こえる。

世界を救う勇ましき軍歌。
悪夢を振り払う銀の剣。
忌まわしいものの筈なのに、とても耳に心地良い。

やがて自分の体が青い光に貫かれ、崩れ落ちる瞬間。
歌声が消えて、人型戦車に乗ったまま泣いている少女が見えた。


ああそうか。お前が、歌っていたから、こんなに―――


ガンパレ夏祭。祭ちゃんで竜撃破の場合(号泣)。



二十四 戀という字を分析すれば いとしいとしと言う心

全ては神の勝手な思惑に、踊らされたに過ぎない。
孤独な王は己と互角の力を持つものに初めて出会い、
泥の人形は己を友と呼ぶものに初めて出会った。
最後の最後まで神の掌で踊らされ、永遠の離別を味わう為に。
数え切れない数多の嘆きを、乾いた大地に染み込ませる為に。

それでも彼等は、己が半身を愛しく思い、触れ合った。
この思いだけは、誰に謀られたわけでもない、彼らの真実であった。
それを一体何と呼ぶのか、彼らどちらにも解らないことだったけれど―――


StrangeFakeでギルエンギル。きっと恋だったけれど二人とも気付けない。



二十五 恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす

この身体は99%、鋼で出来た冷たいボディ。
脳の機能まで殆ど全て金属で置き換えられたそれは、最早ヒトでは有り得ない筈。
それなのに。
あのひとの目が、私の奥に火を灯す。
あのひとの声が、私の身体を熱くする。
あのひとの手が、私の冷たい身体を融かしてしまう。
こんな衝撃は知らない。こんな、衝動は、知らない。
熱くて熱くて耐え切れなくて、助けて欲しくて縋りたくて、鋼の両腕であのひとの背に絡みついた。
力任せのその行動は、彼の眉を顰めさせたのに。
勝利を確信したかのような、不敵な笑みがその口元に見えて。

「――――、ぁ」

最後の最後に残っていた私の人間の部分が、真っ赤になって焼け落ちた。


インガノックケルアハ。何度でも言うがあのェロシーンは機械と人間の交わりにおいての最高峰だと(以下略)



二十六 小唄都々逸なんでもできて お約束だけ出来ぬ人
 
ゴウトは嘆息した。
目の前に畏まって正座する14代目葛葉ライドウの、あまりの融通の利かなさに。

「おい、真柴」
「申し訳ありません。ゴウト殿のお言葉と言えど、出来ぬ約束を致すわけには参りません」

隠し名で呼ぶその声に僅かに苛立ちを篭めると、心底申し訳無さそうに、土下座せんばかりに頭を下げる。
この青年は、呆れるほどに無私で従順だ。
そうであるが故に、厳しい試練を越え、帝都を守るために己が力を振るい続けている。
ライドウの名を継ぐのに何の申し分も無い―――ただ一点を除いては。

「帝都を守る為に己が命が必要ならば、何ら惜しくもありません。全てを捧げましょう」

本気の視線と声音で、きっぱりと告げる彼に、ゴウトは呆れたようにまた息を吐く。
ほんの僅か、形の良い眉が顰められて、申し訳無さそうにまた頭を下げる。 
こうやっていくら、己が身を大切にしろと言われても、絶対に聞かないのだ、この子供は。


葛葉ライドウでゴウライ。葛葉(ていうかゴウト)に従順なライドウが、絶対に聞けない命令。



二十七 この雪に よく来たものと 互いに積もる 思いの深さを 差してみる

きしきし、からから。車輪が雪を踏んでいく。

「よいしょ、っと」

人が一人乗った車椅子は、重い。道に雪が降り積もっていれば、尚更だ。
滅多に九州では降る事のない雪が積もった翌日、二人で外に出た。
重労働である筈なのに、車椅子を押す祭の顔は上機嫌で、足取りも軽い。
何故なら、振り向けばそこに残る、椅子の轍とその間に残る、自分の足跡。
二人で歩いている事を、ちゃんと刻んで残せるからだ。

「うーん。幸せやなぁ、なっちゃん」
「………変な奴」
「えへへ」

思わず呟くと、振り仰いで呆れられたが。
彼の視線も今までの道に向けられ、ほんの僅か緩んだのが解ったので。
祭は心底嬉しそうに笑い、改めて腰を入れて車椅子を押した。


ガンパレ夏祭。ラーブ! ラーブ!(煩)積もるほど向こうは降るのか解りませんが、異常気象ということで(逃)



二十八 これほど惚れたる素振りをするに あんな悟りの悪い人

全く、こんなにも察しが悪いものかとギルガメッシュは嘆息する。
しかしそこには、王の意志を捉えぬ愚者に対する苛立ちは意外にも無い。
寧ろ、そうやって自分を否定し続け、喘いでいる様が何とも愛おしい。
焦ることはない。
もう既に奴には喜悦を与えてやったのだ。後は乾きに任せて啜れる場所を見つけるだろう。
―――さぁ、早く目を覚ませ。
この英雄王が愛でてやろう。


FateZero言ギル。ギル言じゃない よ!(主張)



二十九 酒は飲みとげ浮気をしとげ 儘に長生きしとげたい

この村も、随分と大きくなった。
自分の血を受けた妻と、自分の血を分けた子供の数はもう数え切れぬ程になっている。
それでも、彼は。
「迎えに来たぞ」と手を伸ばした、太陽神すら笑っていなし。
摂理を捻じ曲げ、神話を越えて、生き続ける。


「次の追いかけっこは私の番さ、愛しき死神殿!」


それはまた、別のお話――――。


森うさぎーず。やりたいほうだいはぐれ者。御伽噺の続きのハジマリ。



三十 察しておくれよ花ならつぼみ 咲かぬところに味がある

まるで蕾がこっそりと、気取られずに開くように。
最初は隣に立っただけだった。他の術を知らなかった。
次に、手を繋ぐことを覚えた。触れ合う熱が心地良かった。
次に、手を重ねることを覚えた。手の大きさが違う事を始めて知った。
次に、指を絡ませることを覚えた。離れずに力を込めて良いのだと気付かされた。
次に、抱き締めることを覚えた。隙間が出来なくなる幸せを知った。
この後、どうすればいいのか。
二人で考えて、考えて。
内側の皮膚を触れさせ合えば、もっと幸せになるのではないかと思った。
漸く二人は、くちづけを交わした。


バベルはむとま。試行錯誤の上ついに!(はずい)



三十一 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい
 
かぁかぁ、かぁかぁ、この街を塒にしているカラスどもが煩い。
ダイナは温かくて柔らかい場所で目を覚ました。
ここはダイナのお気に入りだ。この世で一番寝心地の良い場所だ。
しかしこうやって天気が良くて気温も高い、春から夏にかけてじゃないとこの寝床は味わえない。
寒くなると彼女のいいひとはすぐに、屋根の下に入って自分に見向きもしなくなるから。
それが詰まらなくて、まだうとうとしている相手の顔にぐりりと顔を押し付け、唇を舐めた。

「……んぁ…うるせぇ。まだ眠いんだよ俺は…」
「わぷっ」

最近職にありつけなくて青空の下で眠ることを余儀なくされていた灰流は、やはり寝不足だったらしく。
明け方の冷えから自分を守るために、膝の上の温もりを片腕で抱えて、改めて狭い路地裏で蹲った。
しっかり抱き締められた温もりにダイナはあっさり機嫌を直し、ごろごろと鳴いて身体を収める。
まだかぁかぁ鳴いているカラスどもが煩かったけど、気にせず目を閉じた。


森で灰流ダイナ。ホームレス家庭教師と猫。この二人も一線越えさせたいなぁ(危険危険)



三十二 すねてかたよる蒲団のはずれ 惚れた方から機嫌とる

「兄さーん…」
そうっと読んでみても、丸まった布団は身動ぎしない。
兄弟の一線を越えてしまった夜はいつもそう。
自分は怒っているのだという意思表示のつもりなのだろうけれど。
布団の端から覗く耳が真っ赤になっていることに気づいてしまえば、ナガレの頬は自然に緩む。

「…拗ねないでよ」
「拗ねてねぇ!! っておい、コラぁ!」

相手が動きにくいのをいいことに、布団ごとぎゅうぎゅう抱き締めた。


555青赤。なんだこの煮蕩けたナガレ兄。うらやましい(落ち着いて)。



三十三 船頭殺すに刃物はいらぬ 雨の十日も降ればよい
 
遠い異国の空は、今日もどんよりと曇っている。
お国柄仕方の無いことだと解っているのだけれども、自然と心も暗くなってしまう。
今抱えている仕事が、どうにも上手くいかないのもそれに拍車をかける。
相原は遅々として進まない原稿を放り出し、ベッドに寝転がった。

―――ああ、太陽が足りない。

電話をしようか悩んだが、時差を考えると向こうはまだ真夜中だ。
誘惑を堪えて、寂寥を飲み込んだ。


ぼくらの相原英冶。英冶不足の相原。かわ(以下略)



三十四 たったひとこと言わせておくれ あとでぶつともころすとも

「……………」
「黙っていても変わらんぞ。この件に関して、俺はお前を許さん」
「……………」
「何故、あの料理人を殺した。命は助けると、言ったではないか」
「……………」
「そうやって要らぬ相手を、また殺すのか」
「……………」
「ならば、次に殺すのは俺にしろ。この俺の言葉を、煩わしいと思うのなら―――」
「……………済まん」
「ただこの忠告だけは、って、あやっ?」
「……………」
「お、おい待て甘寧! 今―――」


蒼天甘りょも。原典ネタ。告白は無理だ! 出来ねぇ!(痛)



三十五 立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花

憎らしい。
―――するりとその足で立って微笑むその姿が。
腹立たしい。
―――すとんと何の軋みも無く傍らに座るその様が。
妬ましい。
―――すらりと自由に、自分の傍から歩き去るその影が。

自分が失ったものをまるで見せびらかすような彼女が、許せない。


それでも。
ああ、それでも。
何で僕は、あいつを美しいと思ってしまうんだ。


ガンパレ夏祭。暗い中でも祭ちゃんラブななっちゃん。



三十六 たんと売れても売れない日でも 同じ機嫌の風車

かりかりと筆の尻で頭を掻きながら、如月は逡巡する。
帳簿の中身は今月も変わらず、可も無く不可も無く。
仕入れは順調でも、お得意様がいなければ売り上げは振るわない。
自分で書き込んだ金額を睨んでうんうん唸ってみても、変わるわけも無く。
と、僅かに乱れた髪をついと、横から梳かれた。

「見ても儲けが増えるわけじゃねェだろうが。眉間に皺寄ってンぞ」
「煩い、触るな」

心を覗かれたような台詞に、不機嫌のまま手を払おうとすると、逆手に取られて封じられた。
そのまま、あやすようにもう片方の手で、何度も頭を撫でられる。
――これしきの事で機嫌を直してしまう自分が、何とも腹立たしい。


魔人むらきさ。機嫌が同じなのは旦那のおかげ。



三十七 力強ても叶わぬものは 場所の勝負と恋の闇
 
誰もが彼を、恐れ敬う。
ひとりは、人類を救う勇者と言われ。
ひとりは、人類を滅ぼす魔王と言われ。
互いを滅することこそが、己が存在理由と解っていた。
その筈、だったのに。


「…美しい」
「へっ!?」


運命の悪戯から、殺し合い以外の道が有る事を知ってしまった二人。
前途は同じく多難であるけれど、力任せでは成り立たない。
それでも二人は知ってしまったのだ、剣を握り締めたままでも口付けは出来るのだと。


世界を征服するための〜、勇者×魔王。結婚EDもいいけど一旦男に戻って再び女になるルートも良(以下略)



三十八 つねりゃ紫喰いつきゃ紅よ 色で固めたこのからだ

戦場で与えられる傷は誉れ。
それは己が如何に勇敢に戦ったかという証だ。
だから、姿見に映る自分の傷を見ることは、決して呂蒙は嫌いではない。
だが。
今朝見たのは刀傷ではなく、無数の噛み傷と鬱血の後だった。

「……ぐわああああ!? 甘寧っ、これはお前の仕業かー!!?」

叫んでから恥ずかしさのあまり、墳血してしまったが。
とうの昔に彼の寝室から抜け出していた甘寧は、遠いのをいい事に聞かない振りをした。


蒼天航路かんりょも。あれもうこいつら普通に付き合ってるんじゃね。なぁ。



三十九 どうせ互いの身は錆び刀 切るに切られぬくされ縁
 
噛み砕いてやろうか、と何度も思った。
出来ぬことは解っていた、自分とこの矮小な命は既に繋がっていたから。
それでも、歪な希望と絶望を共に抱き続ける自分達が滑稽で、腹立たしくて。
きっと相手も同じ思いだった。
少なくとも共にあった時、切っ先がいつ自分に向けられても可笑しくなかった筈だ。
それでも結局、果たされることはなく。
また自分の牙も、薄い皮膚を食い破ることなど出来なくて。
人の作り出した哀れな呪縛の生贄となって、今朽ち果てようとしている。

鱗に雫が落ちた。
男が泣いている。初めて見る姿だった。
妹を失った時も、親友をその手にかけた時も、決して涙を流すことなど無かったのに。
くく、と僅かに喉が震えた。笑ったのだ。笑うしかなかった。

この男の初めての感情を引き出したのが自分なのだと、
それを嬉しく感じる自分が何より滑稽だったから。
そう、とっくの昔に、これを自らの手で殺す事など―――


DODカイアン。AEDで。こいつらは本編が神なのでもう(以下略)



四十 泣いた拍子に覚めたが悔しい 夢と知ったら泣かぬのに

いつの間にか、自分は両の足で立っていた。
それに疑問も差し挟まなかった。それが、当然だったから。
周りには沢山の人がいて、両親がいて、何不自由なく暮らしていた。


ふと、視線を移すと。
世界の端で、俯いて泣いている女が一人いた。
興味は無いけど何故か視線を外せなかったので見ていると、
女は小さな声でごめんなさい、ごめんなさい、と何度も謝っている。
どうしてお前が泣くんだ。
お前が何をしたっていうんだ。
そう聞いても、彼女は泣きながら首を振るだけで答えない。
苛立って近づこうとすると、逃げていく。
今まで動いていた足が、何故だか動かせない。
ふざけるなと叫ぶと、自分の目尻から涙が一粒落ちて、

目が覚めた。


勿論世界は何も変わらず、足は木偶の坊のまま。
目を覚ましたくなかった、あの女のせいだ、と枕に呪詛を吹き込みながら身体を起こす。
疎ましいので、夢の中の女が美しい桃色の髪をしていたことも、忘れてしまった。


ガンパレ夏祭。なっちゃんの夢はどこからどこまでが悪夢だったか。



四十一 泣くもじれるも ふさぐもお前 機嫌なおすも またおまえ
 
「三条さ〜ん、機嫌直してくださいよ〜」
「……………」
「三条さん仕事だったんだから行けなかったのは仕方なかったじゃないですかぁ」
「……………」
「ほら、授業参観で舞ちゃんと作ったクッキー、一緒に食べましょうよ〜」
「……………」
「今なら俺の入れたお茶も加わって、お得ですよ〜」
「……………」
「もー、じゃあ更に特別サービース! 俺のべんべろべろべら見せてあげますから!」
「いらん」
「あっ、返事してくれたー」
「…クッキーにはコーヒーだろう。ブラックでいい」
「はいっ! すぐ入れてきますねー!」
「……安いな俺も」


アバレ青赤。学校行事に参加できなくて拗ねたお父さん(えー)。



四十二 主はいまごろ醒めてか寝てか 思いだしてか忘れてか
 
「さァて、どうしてるだろうね」

恋人を故国へ置いてきたと言うと、良く問われる。
不安でないのか、浮気の心配はしないのかと。

「あいつの事だ、毎日飄々としてるだろうさ。特に思い出すこともねぇな」

冷たい奴だと言われ、笑うだけで答えた。

「あいつをそういう風に生きられるようにしたのは俺なんだ―――寧ろ誇っていいと思うんだがなぁ?」

自分が柵になるつもりは毛頭無い。
一人で立ってその上で、思ってくれるのが最高だ。


魔人むらきさ。十八と対で、村雨の独白。



四十三 寝てもさめても忘れぬ君を 焦がれ死なぬは異なものよ

あの人が僕の傍からいなくなってから、夢に見ない日はない。
目を覚まして、生活を紡いでいっても、そこかしこに残るあの人の気配を探してしまう。

「はぁ、定時連絡が無いとやっぱり辛いなぁ」

口に出す言葉は、苦笑混じりであくまで軽く。

「チーフ、絶対帰ってきてくださいね」

それなのに酷く、切実で。

「貴方がいなくなったら、僕は」

かの人の旅立った天へ手を伸ばして、呟く。

「僕じゃなくなっちゃうんですから」

微笑んだままで。


冒険青赤。最終回後のちょっとアンニュイなソータ。たまには不安になりますよ。
いなくなるのはやっぱり、傍に、ではなく、存在が。




四十四 寝ればつんつん 座れば無心 立てば後ろで舌を出す

眠る時寄り添うなんて、気持ち悪すぎる。
自分の退屈を晴らす刺激を与えられないのなら、価値なんて無い。
またふらふらと出て行くケダモノを、引き止めることなどなく。


それなのに浅倉は、芝浦の元に帰ってくるので。
しかたなく芝浦は、浅倉と同じ寝床に入るのだ。


隆起タケマメ。ツン…デレ…?



四十五 花は散りぎわ 男は度胸 いのち一つはすてどころ
 
「おーおー、スゲェ。大攻勢たぁよく言ったもんだぜ」
「…本当に、君まで付き合う必要なんてなかったんだよ?」
「つまんねぇ事言ってんじゃねぇよ。最後の晴れ舞台だ、派手に行こうぜ」
「…源くん」
「オラ、さっさと命令寄越しな、隊長!」

声に気負いはまるでない。
その事が悲しくて、それ以上に嬉しくて、岩崎はくしゃりと顔を歪めた。
ウォードレスのおかげで、見られる事は無かったけれど。

「―――命令は…これで最後だよ。一つだけだ」
「おう」


「「オール・ハンテッドガンパレード! ―――突撃ッ!!」」


ガンオケ源岩源。最終日あたり? 二人で殿軍。



四十六 腹が立つならどうなとさんせ 主にまかせたこのからだ

如何したらいいのか解らないんだ、と彼は呟いた。
途方に暮れた声で。苛立っているようにも聞こえた。
背中に回された腕にはぎりぎりと力が篭り、自分を締め付けているけれど。
恐れは無い。自分の命は一度、彼に預けて救われた。
ならば今、自分の全てを差し出すのに何の躊躇いがあるだろう。

「…大丈夫です。大丈夫です、から」

苦しい息の下からそれだけ告げて、腕を相手の背に回す。

「先生に、お任せしますから…お好きに、なさってください」


バベルはむとま。進・展!(ええー)



四十七 ふてて背中をあわしてみたが 主にゃかなわぬ根くらべ
 
ベッドの上で二人きり、だけど向くのは別方向。

「…ごめんね」

自分が悪いとは思っていないけど、謝る言葉が先に出る。
だって久しぶりに会えたのに。こんな風に、ゆっくりした時間が取れるのは久しぶりなのに。

「…悪いと思ってねぇのに謝んじゃねぇ」

やっぱり見抜かれていて、ちょっと笑った。
怒りよりも嬉しさの方が断然大きい。彼が自分の事をちゃんと理解してくれているのが。

「だって、このまま君の顔が見れないままなのは嫌だよ」

素直に気持ちを伝えると、触れ合っている背中がぎくんと軋んだ。
あと、もう一押し。


ガンオケ源岩源。敵わないのは源の方。岩崎は天然たらし。



四十八 古疵へ さわりたくない互いの無口 早く酔いたい久し振り

昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵。
そんな風にやりあって、もう人では追えぬほどの年月が過ぎ去って。

「おい、ロシア! 今日こそテメーにドイツビールの美味さを味合わせてやるぜー!」
「えー、僕ウォトカがいいなぁ」

またいつか、剣を向け銃を取り合う日がくるかもしれないけれど、今は。

「Prosit!」
「ЗА ВАШЕ ЗДОРОВЬЕ! 」

酒を酌み交わせる今に感謝しよう!


APH・露普露。歴史だとこいつらも本当に同盟結んで喧嘩しての繰り返しだなぁと。



四十九 星の数ほど男はあれど 月と見るのは主ばかり

今でも、不思議に思うことがある。
この世界に生きる人々は、正しく星の数ほど居る。
トーマの世界は決して広いものではなかったけれど、それでも沢山の人達と関わった。
優しく抱き締めてくれる人も、自分を拠り所として崇める人もいた。
それなのに。

「…如何した?」
「えっ…」

目の前のソファで本を読んでいたはずの羽村が、いつの間にか傍に居て、トーマの額に手を伸ばしてくる。

「頬が紅潮している。熱でも出たのか?」
「い、いえ、大丈夫です!」

何度も触れ、そうか、と僅かに安堵したように息が吐かれ、トーマは堪らず俯いて思う。
数奇な廻り合わせで出会ったこの人が、一番光り輝いて見えるのは何故なのだろうか?


バベルはむとま。それは、恋だよ(いい笑顔)



五十 惚れて惚れられなお惚れ増して これより惚れよが あるものか

「どうして、お前はそこまで」

抱き寄せたら、耳元で小さく呟かれた。
僭越ですが愚問です、と心の中だけで返す。
本来仕える相手に愚昧な思いを抱いてしまった自分を、
罰さぬどころか思いを返してくれた貴方に、
惚れ直し惚れ抜かぬわけがありましょうか!


真剣青赤。りゅーのすけの愛は止まらない。



五十一 惚れた証拠にゃお前の癖が いつか私のくせになる

職場で、思わず口を吐いて出た。

「よし、皆。気合入れていこう!」

はい!と部下達からいい返事が帰ってきて、訓練へ散っていく。
全員去ってから、あまりの恥ずかしさに気付いて一人で悶絶した。


555青赤。だって一番効く言葉だから、つい!



五十二 文字で口説いて 気持ちで惚れて 姿に見とれて 身に溺れ
 
―――最初は、策略だったのだろう。
自分とその一族を繁栄させる為の、嘘と演技に過ぎなかった筈。
いつの間にか、そういつの間にかだ―――このひとをいとおしいと思うようになった。
気がついたら、その恐ろしい姿を眺めるのが楽しくなってきて。
我慢できずに、追いかけた。
我慢できずに、その身に触れた。

ずるりと崩れる、体。
色を失った瞳に、呆然とした死神が映る。

「どうして、」

途方に暮れた声を聞き、エル・アライラーは心底嬉しくなって笑った。
やっと私は、このひとを手に入れることが出来たのだと。
そしてそのまま、死神の腕の中へ―――


森うさぎーず。二十一の続きで終わり。御伽噺はこれでオシマイ。



五十三 横に寝かせて枕をさせて 指で楽しむ琴の糸

「いいか、僕は大変疲れている」
いつもの配達から帰ってきた骨董屋の主は、留守中勝手に上がりこんでいた男に対してそう宣言した。
「だから、そういうことをやる気は全く一切無い」
そう言いながら相手の肩を掴み、畳の上に乱暴に押し倒した。
押し倒された方は、堪えきれぬ笑いを口元に浮かべながら、ではと問う。
「どうすりゃいいんだ? お姫様」
「枕」
端的な願いに了解、と頷き、ごろりと寝転んできた身体を肩と胸で抱き寄せる。
手持ち無沙汰らしい手指を絡め合い、暫しの午睡と相成った。


魔人むらきさ。つくづく都々逸が良く似合うカプだ。



五十四 論はないぞえ惚れたが負けよ どんな無理でも言わしゃんせ

「俺にだって出来ることと出来ないことがあるんだからね」

呆れたように呟く淳の目の前で、ふらふらと歩いてきた浅倉はぼすりとベッドに沈む。

「尻拭いにも限界あるんだから! かくまってあげるだけでも感謝してよね!」

ニュースではまた大きく、通り魔の被害についてキャスターがヒステリックに叫んでいる。
死人は出ていないようだからそこまで長く続くことはないだろうけど、暫くこいつを外に出すことは出来ない。

「…腹が減った」
「はいはい、あーあ俺ってもうトップブリーダーになれるんじゃねぇ?」

珍しいイキモノだから、捨てる気なんて全くないけれど。


隆起タケマメ。自覚してない獣と自覚したくない子供。こいつらも成長しないな!(誰のせい)



五十五 わたしゃお前に火事場の纏 振られながらも熱くなる

「手に入れられるものなら、手に入れてみろ」

絶対に無理だろうがな、と言外に込められていたのは間違いない気がする。
だからといって、諦める気だけは全く起きなかったのが笑える。
情報だろうが、女の子だろうが、いつもクールにスマートに。
手に入れられるものだけを得るのが最良だった筈なのに。
この人だけは、いくら振られてもう止められない。

「絶対諦めませんからね」
「ふん、いい返事だ」

その笑顔を見続ける為なら、どこまでもお供しましょう。


冒険青赤。積極的な敗北宣言。