時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

はじめまして

『……ルド。   レオ……ド』




センサーがその「音」をキャッチした瞬間、彼は飛んでいた。


否、飛ぶという表現は適切では無い。
これが普通の人間ならば、「酩酊感の後、意識が薄れる」とでも表現できたのだろうが、彼には「飛ぶ」としか表現できなかった。
それほどまでにその感覚は奇異なもので、今まで味わったことの無い反応だったからだ。
抗うことなど出来ず―――否、しようとも思わず、彼はその流れに身を任せた。
彼は機械兵士。シリアルナンバーで呼ばれ、血を流さずに相手を破壊することの出来る兵器だった。
本来なら彼には「主」がいた筈だった。本来彼らは、その為に作り出されたものの筈だった。
しかしこの機界ロレイラルにおいて、度重なる戦争は国土を荒廃させ、本来戦をしていた者達――融機人と呼ばれた者達を滅ぼした。
「兵士」に「主」は存在しなくなった。
これが人であれば、或いは途方に暮れ、或いは探しに動き、或いは怒りや悲しみに身を任せただろう。しかし彼は、それすらも出来なかった。
彼は只待っていた。
主が自分を起動させることを。



『……………師、マグナが命じる―――』



音が聞こえる。
自分を、呼ぶ音が聞こえる。





『呼び声に答えよ―――異界のものよ!!』





今まさに、彼は目覚めた。





『おまえの名前は――――――「 レ オ ル ド 」』





<RE−O−LD>

彼はそれを認識した。
シリアルナンバーとは違う、自分の呼び名。





『来い――来い―――来い―――頼む、来てくれ!!』





形式ばった言葉ではなく、只自分を求める言葉。
言葉に熱源などあろう筈が無いのに、何故か彼はその「音」に熱を感じた。




彼はもう躊躇う事無く、その「音」に向かって飛んだ。


















光と音と風。
それを、不意に感じた。



「…や…やった…やったぞ! 召喚できた!」


今までエコーがかかっていた「音」が、はっきりと認識出来た。





<現状解析…「声」と認識>




<熱源反応有…有機体化合物と認識…異界「リインバゥム」に生息する「人間」の可能性、97%>






「貴方ガ…我ガ「あるじ殿」カ?」

「えっ? あっ…まぁ、うん、そうだけど」






<声紋分析完了。「主人登録」確認>













「了解イタシマシタ、あるじ殿」

こうして彼は、「レオルド」になった。