時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

LEVEL DEVIL

先程から俺の友人兼想い人は、俺の叔父さんが政府の目を掻い潜って入手したアメリカのロック雑誌に夢中になっている。
別にそのことを責めるわけではないし、喜んでくれたら正直すごく嬉しいんだが。
「七原」
…………返事はない。そうか、そんなに楽しいか、俺をシカトするほどに。
「七原ー。…秋ちゃーん」
じりじりと奴の後ろに近づいていることにも、気づいていない。
ギリギリまで近づいてふっ、と耳に息を吹きかけてやった。
「ひゃっ!?」
お、性感帯発見。
「み、三村!? 何だよいきなり!」
僅かに顔を赤らめて、七原が振り向く。やっとこっち向いたな。
睨んだって、お前の眠そうな目じゃあちっとも恐くない。むしろ可愛いぜ、ベイビ。
あいつが見惚れる笑みを口に刻んでやってから、腕を取って自分の腕の中に抱き込む。
少しだけ抵抗があるが、諦めたようにくたりと力を抜く。その反応に気を良くして、よしよしと頭を撫でてやる。
癖のついた長めの茶色い髪。触ると凄く手触りがいい。
始めてシたときは、俺も余裕が全然無くて(情けない)、只相手を貪る事しか出来なかった。でも、今なら。
髪を一房手にとって、弄ぶ。指の隙間から零れ落ちるままに、その感触を楽しむ。
そして髪にキス。びくりとなって肩を竦める七原。凄く可愛い、と思う時点で何か駄目なんだろう。
頼むから俺以外の前で、そんな仕草してくれるな。
額にかかる髪を持ち上げて、その下にもキスする。
その次は瞼。
そのまた次は頬っぺた。
「………、三村、」
心底困った、と言う声音で七原が俺の名前を呼ぶ。
「…こういうの、嫌か?」
耳元で囁いて、行きかけの駄賃に耳朶にもキスする。
「い、嫌…じゃない、けど何でんむ」
返事だけ聞いて、後の言葉を直接飲みこむ。我ながら意地は悪いと思うが、やめられない。
キスして、抱き締めて。
俺以外見ないでって、叫んでやりたい。
アイシテルとかスキダとか、そんな言葉イラナイ。
「……っ、は………」
俺の腕の中で、甘い吐息を吐いてくれれば、それだけでイイ。