時計+人形

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ストロベリー

「解った…園村とそこに行きゃあいいんだな…」
その後簡単な言葉を二、三度交わして、城戸は携帯を切った。
相手は高校時代の友人だった。日々営業に追われる自分に突然伝えられたその言葉は、自分に驚愕をもたらすのに十分だった。
「ヤツが……生きている………」
一言で表すことが出来ない、自分の憎悪と、悔恨と、憐憫の対象。しかし彼は、自分の目の前で死んだはずだった。それなのに。
「何だってんだ…クソッ……」
血が騒ぐ。訳の解らない焦燥に胸が焼ける。収まらない感情を拳に込めて、コンクリートの壁にぶつけた。
ガヅッ!!
自分が高校時代に立ち帰ったような衝動が沸いた。
この街は、息苦しい。
何か得体の知れない物の手が、身体じゅうに纏わりついているような気持ちの悪さ。
自分が知らないうちに何か、大切なものを決められてしまっているみたいで、気分が悪い。
息が上がった身体を落ち着ける様に壁に背を預ける。
無性に、彼に会いたかった。


tellllll………… tellllll…………


ガチャ


「Yes?」


「………」



「…えっ? もしかして…レイジか?」


「……」



「うわ…どうしたんだよ、急に……」


「………………」



「いや…う、嬉しいけどさ……」


「………、…………」



「な、何だよ。いいじゃねーか別に」


「…………。………………」



「…何だってええ!! マジかよ!!」


「………………」



「…レイジ、大丈夫なのか?」


「………?」



「いや、ホラ! お前…ヘコんでんじゃねぇかって……」


「……………」



「だー!! いいじゃねーかよ! ひ、久し振りだろうが、話すの!!」


「………」



「だって時間あわねぇし…お前疲れてんのに、夜中にかけたりしたら迷惑だろ?」


「…………。」



「…ん…サンキュ」


「……………」



「…会いて―よ、俺も……」


「………」



「俺も! 俺も、行くよ…あ、あのヤローにもう一発キメてやらなきゃ気がすまねぇっ!!」


「…、……」



「な、何だよ! 笑ってんじゃねーよ!」


「………………」



「わーってら! ったく…」


「…………」


「じゃ…本当に大丈夫だな?」


「………」



「おぅ。 ………俺もだよ。バーカ」



ガチャン。