日常から脱却のプレリュード
日曜日の朝、目を覚ましてやる事は、パソコンの起動。
手際良く、ネットに繋ぐ。目指す場所は、
……………ＤＤＳ−ＮＥＴ＞ＡＣＣＥＳＳ＞ＣＨＡＴ．
……………Ｈｅｌｌｏ！
ｓｈｉｎ＞おはようございます。
このページのチャットで『お喋り』するのは、俺の日課になっている。特に日曜日の朝は、知り合いが全員集まるので、賑やかな雰囲気になる。
俺のＨＮは＜ｓｈｉｎ＞。「光」を捩ってつけた簡単な名前だが、結構気に入っている。
ｍｉｃ＞あっ、ｓｈｉｎさんだー！ おはようございまーす！（＾▽＾）
彼女は＜ｍｉｃ＞。チャットの様子やメールのやり取りで、恐らく女性だと思われるから便宜上こう呼ぶ。
子どもっぽい所があるが、いつも明るく元気なのが取柄だ。
リザード＞おはようございます、ｓｈｉｎさん。
＜リザード＞はいつも冷静で、どこか冷たい感じもするが、礼儀正しい。学生だと名乗っていたが、落ちつきからするともう一つ二つ年上ではないだろうか。
ＤＯＬＬ＞おはよーっす！
…反対に、こちらは少々落ちつきが足りない。＜ＤＯＬＬ＞というＨＮに相応しくない賑やかさだが、その勢いは結構嫌いじゃない。
Ｕ−Ａ＞オハヨウ。遅かったね、もしかしてパソ子が拗ねてた？（＾＾）
最後の彼は多分、このメンバーの中では一番年長者だろう。<ウーア>とでも読むのかと思ったがそのまま<ユーエー>で良いらしい。
彼の言葉に苦笑して、キーボードを叩く。
ｓｈｉｎ＞いいえ、ただの寝坊。すいません（ｍ−−ｍ；）
ｍｉｃ＞ちょっと心配してたんですよ。＜遅かった
ＤＯＬＬ＞事件に巻き込まれたんじゃないかって（＾−＾）
事件？ ちょっと考えて、すぐ思い立った。
昨日、家の近くの公園で殺人事件があった。女性の身体がバラバラになって、池の中に散乱していたらしい。
母親は大げさなぐらい心配していたけど、母一人子一人じゃ無理ないだろう。
俺も平気というわけには行かず、昨日は外が少し気になった。
ｓｈｉｎ＞巻き込まれてはいませんが、不安ですね。何せ目と鼻の先だから（本当）
リザード＞猟奇殺人だそうですね。
ＤＯＬＬ＞何でも、女の身体が「食いちぎられてた」そうじゃないですか。ただの殺人じゃなさそうですね
初耳だった。＜ＤＯＬＬ＞は時々、ニュースや新聞でも公表されていない事件の極秘の情報を仕入れている。
噂ではハッカーではないかと言われているが、前さりげなく聞いたときははぐらかされてしまった。
まぁ、無理に聞く必要もない。
ここでは、職業も本名も必要ない。呼ぶための名前、それだけがあれば誰も咎めはしない。
ｓｈｉｎ＞初耳です。＜「食いちぎられてた」犬か何かでしょうか？
ＤＯＬＬ＞さぁ、そこまでは？
ｍｉｃ＞殺された後に、食べられちゃったとか…？（；−；）
リザード＞どちらにしろ悲惨ですね…
やや重苦しくなったチャットの中に、今まで沈黙していた最後の一人が書き込みを始めた。
Ｕ−Ａ＞それは多分、「悪魔」の仕業だな
ｍｉｃ＞悪魔ぁ〜！？
ＤＯＬＬ＞でたー（−−；）
リザード＞出ましたね、Ｕ−Ａさんの十八番。＜悪魔
そう、＜Ｕ−Ａ＞はよくこの言葉を口にする。
彼曰く、迷宮入り事件などによる不可解な出来事は全て「悪魔」と名のつくものの行動だと言うのだ。
牙や角が生えていて、願いを叶える変わりに魂を…といったものではなく、
古くから言い伝えられてきた妖怪、妖精、神や天使など、皆ひっくるめて彼はそう呼んでいる。
ｍｉｃ＞本当なんですか？？
ＤＯＬＬ＞ｍｉｃちゃん、信じちゃダメ（−−；）
Ｕ−Ａ＞ま、信じる信じないは皆の自由だよ
しかし彼が敬遠されないのは、その考えを口にするだけで人に押しつけはしないからだ。
この仲間内でも信じているのはｍｉｃだけで、Ｄｏｌｌやリザードは端から信じていない。
かくいう俺も半信半疑だ。
しかし…最近良く見る不可解な夢のことを話した時、＜Ｕ−Ａ＞は親身になって相談に乗ってくれた。
彼の助言は的確だったし、どんな突飛な言葉でもまるで経験に裏打ちされたような重みがあった。
それ以来、彼の言葉を頭ごなしに否定することが出来ない。
「光ー！ もう起きてるの？ はやくご飯食べちゃいなさい！」
おっと。母上様からのお達しだ。愛犬の餌をねだる声も聞こえる。来たばかりだが、今日は早めに退散することにした。
ｓｈｉｎ＞すみません、母が呼んでいるので一回落ちます。慌ただしくてすみません
リザード＞いえいえ。それじゃあ、また。
ｍｉｃ＞さようなら〜（＾＾／~）
ＤＯＬＬ＞また来週〜！
Ｕ−Ａ＞本当に、気をつけて。じゃーね！
ｓｈｉｎ＞さようなら。
…………
チャットを追え、電源を切ろうとした時に何かが飛びこんできた。
このＤＤＳ−ＮＥＴのホスト、＜ＳＴＥＶＥＮ＞からだった。
「………＜悪魔召喚プログラム＞？」
手際良く、ネットに繋ぐ。目指す場所は、
……………ＤＤＳ−ＮＥＴ＞ＡＣＣＥＳＳ＞ＣＨＡＴ．
……………Ｈｅｌｌｏ！
ｓｈｉｎ＞おはようございます。
このページのチャットで『お喋り』するのは、俺の日課になっている。特に日曜日の朝は、知り合いが全員集まるので、賑やかな雰囲気になる。
俺のＨＮは＜ｓｈｉｎ＞。「光」を捩ってつけた簡単な名前だが、結構気に入っている。
ｍｉｃ＞あっ、ｓｈｉｎさんだー！ おはようございまーす！（＾▽＾）
彼女は＜ｍｉｃ＞。チャットの様子やメールのやり取りで、恐らく女性だと思われるから便宜上こう呼ぶ。
子どもっぽい所があるが、いつも明るく元気なのが取柄だ。
リザード＞おはようございます、ｓｈｉｎさん。
＜リザード＞はいつも冷静で、どこか冷たい感じもするが、礼儀正しい。学生だと名乗っていたが、落ちつきからするともう一つ二つ年上ではないだろうか。
ＤＯＬＬ＞おはよーっす！
…反対に、こちらは少々落ちつきが足りない。＜ＤＯＬＬ＞というＨＮに相応しくない賑やかさだが、その勢いは結構嫌いじゃない。
Ｕ−Ａ＞オハヨウ。遅かったね、もしかしてパソ子が拗ねてた？（＾＾）
最後の彼は多分、このメンバーの中では一番年長者だろう。<ウーア>とでも読むのかと思ったがそのまま<ユーエー>で良いらしい。
彼の言葉に苦笑して、キーボードを叩く。
ｓｈｉｎ＞いいえ、ただの寝坊。すいません（ｍ−−ｍ；）
ｍｉｃ＞ちょっと心配してたんですよ。＜遅かった
ＤＯＬＬ＞事件に巻き込まれたんじゃないかって（＾−＾）
事件？ ちょっと考えて、すぐ思い立った。
昨日、家の近くの公園で殺人事件があった。女性の身体がバラバラになって、池の中に散乱していたらしい。
母親は大げさなぐらい心配していたけど、母一人子一人じゃ無理ないだろう。
俺も平気というわけには行かず、昨日は外が少し気になった。
ｓｈｉｎ＞巻き込まれてはいませんが、不安ですね。何せ目と鼻の先だから（本当）
リザード＞猟奇殺人だそうですね。
ＤＯＬＬ＞何でも、女の身体が「食いちぎられてた」そうじゃないですか。ただの殺人じゃなさそうですね
初耳だった。＜ＤＯＬＬ＞は時々、ニュースや新聞でも公表されていない事件の極秘の情報を仕入れている。
噂ではハッカーではないかと言われているが、前さりげなく聞いたときははぐらかされてしまった。
まぁ、無理に聞く必要もない。
ここでは、職業も本名も必要ない。呼ぶための名前、それだけがあれば誰も咎めはしない。
ｓｈｉｎ＞初耳です。＜「食いちぎられてた」犬か何かでしょうか？
ＤＯＬＬ＞さぁ、そこまでは？
ｍｉｃ＞殺された後に、食べられちゃったとか…？（；−；）
リザード＞どちらにしろ悲惨ですね…
やや重苦しくなったチャットの中に、今まで沈黙していた最後の一人が書き込みを始めた。
Ｕ−Ａ＞それは多分、「悪魔」の仕業だな
ｍｉｃ＞悪魔ぁ〜！？
ＤＯＬＬ＞でたー（−−；）
リザード＞出ましたね、Ｕ−Ａさんの十八番。＜悪魔
そう、＜Ｕ−Ａ＞はよくこの言葉を口にする。
彼曰く、迷宮入り事件などによる不可解な出来事は全て「悪魔」と名のつくものの行動だと言うのだ。
牙や角が生えていて、願いを叶える変わりに魂を…といったものではなく、
古くから言い伝えられてきた妖怪、妖精、神や天使など、皆ひっくるめて彼はそう呼んでいる。
ｍｉｃ＞本当なんですか？？
ＤＯＬＬ＞ｍｉｃちゃん、信じちゃダメ（−−；）
Ｕ−Ａ＞ま、信じる信じないは皆の自由だよ
しかし彼が敬遠されないのは、その考えを口にするだけで人に押しつけはしないからだ。
この仲間内でも信じているのはｍｉｃだけで、Ｄｏｌｌやリザードは端から信じていない。
かくいう俺も半信半疑だ。
しかし…最近良く見る不可解な夢のことを話した時、＜Ｕ−Ａ＞は親身になって相談に乗ってくれた。
彼の助言は的確だったし、どんな突飛な言葉でもまるで経験に裏打ちされたような重みがあった。
それ以来、彼の言葉を頭ごなしに否定することが出来ない。
「光ー！ もう起きてるの？ はやくご飯食べちゃいなさい！」
おっと。母上様からのお達しだ。愛犬の餌をねだる声も聞こえる。来たばかりだが、今日は早めに退散することにした。
ｓｈｉｎ＞すみません、母が呼んでいるので一回落ちます。慌ただしくてすみません
リザード＞いえいえ。それじゃあ、また。
ｍｉｃ＞さようなら〜（＾＾／~）
ＤＯＬＬ＞また来週〜！
Ｕ−Ａ＞本当に、気をつけて。じゃーね！
ｓｈｉｎ＞さようなら。
…………
チャットを追え、電源を切ろうとした時に何かが飛びこんできた。
このＤＤＳ−ＮＥＴのホスト、＜ＳＴＥＶＥＮ＞からだった。
「………＜悪魔召喚プログラム＞？」