時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

物書きさんに20のお題・茶

01.集合写真

元から興味が無い、と言っていたから。
修学旅行の時、腕を掴んで無理矢理写って貰ったのが唯一の写真。




02.割引チケット

商店街の福引で当って無理矢理押し付けられた。
どうするかと思うより先に誘われる事を望むであろう子供の顔が浮かんだ。
腹が立ったのでその紙切れはそのまま塵箱行きになった。




03.愛妻弁当

飯が柔らかいのも卵焼きが甘いのも煮物の味が濃すぎるのも好きじゃない。
「はい、あーん♪」
だからどうかこの笑顔の断り方を教えてくれ。




04.どっちつかず

この身を嘆き、力に溺れ、
血を望み、怯えを恐れ、
月に惑い、月に狂い、
一体自分は何なのか。




05.割れた鏡

全て粉粉に打ち砕いてしまえ。
自分の姿を省みる必要はない。
しかしどうしても砕けなかった、
お前の瞳の中に映る自分。





06.丸文字

「…読みにくいんだよ」
「あぅ」
「しかも石版に日記調で書くんじゃねぇ」
「え、ダメなの?」





07.泣き寝入り

金縛りの魔法をかけられて、一人でこっちに戻された。
泣きたくなかったのにいくらでも涙が出た。





08.クラクション

「バイクの叫び声なんだよね」
「……?」
「だって、僕はここにいるぞーって叫んでるんだもん」
鳴らしたがる奴は、きっと代わりに叫んでもらってるんだ。





09.80円切手

何枚貼ったら魔界まで届くかなぁ。





10.ため息

前より減った気がするが嬉しくない。
呆れの対象になる奴が傍に居ないから。 

多くなってるのかも知れないけど気付かない。
指摘してくれる人が傍に居ないから。
 




11.教科書

ロッカーに突っ込んだ鞄の中に忘れられたまま。
きっともう二度と開かない。
 




12.Lサイズ

貴方のブレザーはコート代わりなのです。





13.アンカー

「今度はあたしじゃなくてキミの番。そんな気がするんだ」
バトンはしっかり手渡した。
さあ全力疾走でコースを外れよう。





14.チョコレート

それは自分の、頼りになる非常食。
いつでもポケットに入っていて、迷宮の中でも便利。
でも今、いくらでも食べられる状況になったのに。
なんでこんなに苦いんだろう。





15.雨宿り

バイクに乗っている最中、雨に降られて慌てて木陰に滑りこんだ。
「あぅ〜っ、冷たい〜!!」
子犬のようにぶるぶると頭を振る少女に少し笑い、天を仰ぐ。
ゴロゴロと雷鳴が聞こえる。どうやらかなり近いようだ。
ひょこりと少女が木陰から顔を出した瞬間、
カッ!!
ゴロゴロゴロゴロ!!
「ひゃう――――っ!!」
素っ頓狂な叫び声をあげて腕の中に飛び込んできた。
「っ! 何しやが…」
「びっくりしたー!! わあああ!」
思わず顔を仰け反らせ抗議する前に、素早く少女は再び雨の中に飛び出す。
ガカッ!!
ドシャア――――ンン!!
「ひょああ――――!!」
「怖がってんのか楽しんでんのか、どっちだテメェは!」
どたばた暴れまくる子供を怒鳴りつけると、きらきら光る大きな目と視線が合ってしまった。  
「すごいね! きっとあそこに、かみさまがいるんだよ!!」
指差す先には、明確な稲光を見せる雲が揺らめいていた。
少女は何の疑問も持たず、ただ素直な瞳で笑っていた。
 




16.インターフォン

「幸せな家庭」への扉を開くボタン。
それなりに大きな家で、恐らく何の心労も無く育った少女。
そこに入りこむ事はやはり出来ず、踵を返した。





17.匿名希望

「アキラくんは、アキラくんだよ。絶対に」
それ以外の名前を俺に寄越せ。
俺はもう、そうやってお前に呼ばれる存在じゃない。 





18.カレンダー

あの日からただ只管×をつけ続けている。
誓ったんだ、この印が付いてない日にちより多くなる前にまた会おうって。





19.偉そうに

「じゃあな。ここで起きたことなんざ、サッサと忘れるこったな…」





20.グッドニュース

世界が少しずつ、崩壊していく中。
それでも彼女は、探し続けていた。
彼の忘れ形見であるバイクを駈り、縁の深い砂の大地まで走らせてきた。
そしてついに、尻尾を掴んだ。
「エジプトの古代神の姿をした生物が、ナイル上流に出現…!!」
新聞に書いてあった大きな記事を見つけた時の感動は計り知れない。
やっと、見つけた。
やっと、掴んだ。
小さな身体に不似合いなほどの勢いで、少女は走り出す。
もうすぐ、会える。