時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

落砂

零れ落ちる砂を 止めることは出来ない
卵の殻はいつか割れ 落ちた雫は返らない
あまりにも残酷 あまりにも刹那

あまりにも 永遠







「ごめんね」
胸の上で、小さな声がした。
「何で、謝る?」
「ごめん…ね、いっしょに…いられないで、ずっといっしょじゃなくて、ごめ…っ」
少女の零す雫が、自分の肌を濡らす。
「謝るんじゃねぇよ…」
相手を責める訳にはいかない。でも、自分も後悔はしていない。
「ごめ、ねっ、あたし、さきにいっちゃって、ごめんねぇえっ…!!」
「泣くなっ…!」
耐え切れずに、両腕で抱き締めた。細い腕は、両方とも自分の首に回された。
「俺はお前を――――」
何を言えば良いのか解らない。自分が誰かに何かを与えられるなど、考えたこともない。それでも、何かを伝えなければならない。彼女にだけは!
「俺は、お前を…絶対に忘れねぇ」
こんなにも、人を愛しいと思う事は、きっと最後。
「お前が逝く時は―――、髪の毛一本残さずに俺が食らい尽くす…!」
「あっ……!」
驚きなのか、感極まったのか、桜色の唇から声が漏れる。
「誰にも渡さねぇ。お前は俺のモンだっ…!」
「あきらく…あきらくん、あきらくんあきらくんっ…!!」
いつまでも、人のころの名前で自分を呼ぶ少女。
自分がこの世界に顕現するのは全て彼女の為。
「忘れないで、あたしのこと忘れないで、絶対忘れないでっ忘れないでぇ…!」
貴方の側にいつまでもいられない。何があろうと必ず、自分は彼を置いていってしまう。
私は彼に、置いていかれてしまう!
だから、ただ願う。
「忘れないで…!」
「忘れられるわけねぇ…ッ、忘れてたまるか…!」
抱き締めて、抱き締められて、口付けて、口付けられて。
隙間が出来ないほどに一つになっても、恐怖が何処かで心を揺らす。
それを癒したくて、二人でただ眠った。







時は無情 時は残酷 時は永遠
刹那の出会いと別れであっても

貴方忘れ得ぬと誓えば、

それは、永遠になるであろうと、信じたい