時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

―――思えば彼女は、随分と沢山約束をしていた、と思う。







「アキラくんアキラくん! 一緒にお昼食べよっ?」






最初は鬱陶しいのと気恥ずかしいので、よく無視していたけれど。







「アキラくーん! ちょっと待ってて、一緒に帰ろ――!!」






諦めることなく、何度も何度も「約束」していった。

諦めることなく、何度も何度も「一緒に」と言った。








「ねえねえ、アキラくん! 今度の日曜日、一緒に遊びに行こうよー!」







それは、直ぐ叶えられる他愛も無いことだったり。






「ねぇ、お願い! 一緒に連れてって! あたしもバイクの免許取るし! 二人なら寂しくないよ!」







本当に叶えられるかどうかも解らない、夢物語だったりしたけれど。







「ね、アキラくん………。絶対に、一緒に、帰ろうね?」







それは全て柔らかい棘になって、自分の心臓に刺さっている。








「アキラ君! あたし、絶対、絶対、アキラ君のこと忘れないから! 絶対、戻ってくるから! また魔界に来るからっ………!!」







最後の約束は、絶対に果たせない約束。


それでも自分の心臓に、



刺さって抜けない甘い鈍痛。