時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

23:終焉:

ドゴォン!!と音がして、搭の一階付近が爆発を起こした。
その爆発はどんどん上の方に伝わっていき、やがて―――――
ビキビキビキビキビキッ!!!
ズゴゴガアアアアンン!!!
「ひょえええええ〜〜〜〜〜!!!」
間近で見た光景が信じられなくて、ハクシは素っ頓狂な叫び声をあげた。他の面々もそれは当然で、先生以外は声も上げられず呆然としている。
この街の中心、伯爵の象徴である搭が、根元からぽっきり折れて倒れていく光景など、誰も予想したことすらなかったのだから。
「あ、と、トク兄っ、ジンたちは――――」
「―――――!!」
瓦解寸前の搭から黒い何かが飛び出したのを目で捉えたトクヤが、それを指差す。皆がそれに視界を向けた瞬間、
「!!! おにいちゃ―――――――んん!!! ゼロぉ――――――――!!!」
誰よりも早くその黒い騎士の正体に気づいたネジが、彼等に向かって駆け出した。
「え、え、あれがジン?」
「うわ〜あれもしかしてゼロ纏ってんの!? すんげ〜!!」
「皆さんで、迎えに行きましょう!」
一方、倒れていく搭を見送ったジンとゼロは、外に出るなり自分達の耳に届いた叫び声にはた、と意識を揃え。
遥か下、自分の足で真っ直ぐに、一生懸命走って来る少女を視界に捉え。
「…い、やっほおおおおおっ!!」
雄叫びを上げて、急降下した。
地面に辿り着く直前に装着を解き、ジンが地面に降り立ち、ゼロも着陸した瞬間、漸く辿り着いたネジが二人に向かって飛びついてきた。その小さな腕を、二人の首に同時に回して。
当然二人は、過たずその小さな身体をしっかりと抱き留めたのだった。











歓声を上げる青年達の輪から少し離れて、先生は僅かに目を眇めて、赤い砂煙を立てて地に沈んでいく搭を見ていた。
少しずつ、少しずつではあるけれど、この世界は改変していく。旧き世界のモノは滅びてゆき、新しいモノが生まれ始めている。
いつかは自分もこうやって、滅ぶ事が出来るのだろうか。
―――滅ぶ事を、許される時が来るのだろうか。
来るわけがない裁きの時を思い、先生は一度だけ瞑目し。
(…お前の悪夢は、終わったか――――――?)
と、やはり何の意味もない祈りを奉げる事しか、出来なかった。



fin.