時計+人形

のんべんだらりんごった煮サイト

The starting world.

いつ終わるとも知れぬ旅の中、魂の片割れを失った少年は、ただただ泣いていた。
やがて、身体は再構成され。
光と、音と、感覚が戻ってくる―――――




「死ね、死ねっ、死んじまえよおおお!!」
一瞬の違和感の後、悠太は商店街の真ん中に立っていた。辺りの人々は逃げ惑い、自分の目の前に刃物を持った男が立っていた。そんな理不尽な光景を見ても、彼には何の感慨も沸かなかった。
(いいか? 相手が刃物を持ってる時は―――――)
只、身体だけが簡単に動いた。
(半歩だけ横に動いて、腕押さえろ。そのまま引けば相手は絶対体が崩れる)
「う、うお!?」
頭の中に響く声に従って、そのまま―――
(そしたら真っ直ぐ前に逃げろ。余裕があるならそのまま膝蹴りたたっ込め)
どぐっ!!
「ぐぇえっ!!」
通り魔はあっさりと、その攻撃に昏倒した。悠太はそれを見てもなんの反応もせず、自分が持ったままだった学生鞄に少し笑い、快哉を上げる野次馬の間を縫って、目的地へ向かって歩き出した。




――――あの体験が、夢であるなら夢で良いと思う。
自分にとっては、何物にも代え難い現実であり、大切な時間だったのだから。
そして、信じられない程の喪失を、自分は味わったのだから。
もうこの味気ない世界に、自分はいられない。
君には良い世界だと、言ってしまったけれど。
君がいないのなら何の意味もない――――
身体の半分が、ごっそりと無くなってしまったような喪失。
きっと自分と彼は、魂の双子だったのだ。
もう一度。
もう一度、君に会いたい。
日々、そのことしか考えられなくなっている自分がいる。





毎日武器を持ち歩くようになった。ほんの小さなナイフだけれど、あるに越したことはないと思って。
明確に行きたい大学が決まった。将来、彼の元へ行ける機械――そう、あの装置を作ろう。犠牲なんて出さない、君達を助けるための機械を。
待っていて。
必ずもう一度、会いにいくから。